その他

業務マニュアル化のメリット・デメリットとは?

現場のマネジメントを行っている方の中には、以下のようなお悩みを抱えている方が多いのではないでしょうか?

  • 業務処理上のミスを減らしたい
  • 業務の属人化から脱したい
  • 人によって理解が異なる業務がある
  • 社員やアルバイトの教育が進まない
  • 何度も同じことを部下に教えている

マネジメント層であれば、日々の業務でも常に業務効率化の方法やリスク回避の仕組みを考えておかなければならないので、このような悩みを抱えるのは当然です。
この問題を解決するために多くの方々の頭には「業務マニュアルを作成する」という手段が思い浮かぶかと思いますが、「マニュアル作成で業務の品質向上・効率化ができるのか?」「業務マニュアル化のメリット・デメリットは?」などの気になる点もあることでしょう。

そこで本記事では、改めて「業務マニュアル化のメリット・デメリット」を整理しながら解説していきたいと思います。業務マニュアルの作成をご検討中の方はぜひ参考にしてみてください。

業務マニュアルの重要性

業務マニュアルとは、業務の全体像を示すとともに、各作業工程に必要な準備や手順をまとめた手引書です。業務理解が深い人が作成することが多く、業務遂行時の正確性とそれを実現するためのノウハウが詰まったものでもありますので、現場の重要な知的資産ともいえるでしょう。

業務マニュアルは紙やPC上のドキュメントファイルにまとめられ、使用時の環境に合わせて参照しやすい形で共有されます。PC上のドキュメントファイルであれば、MicroSoft Office製品(Word, Excel, PowerPointなど)や無料で利用可能なオンラインのGoogleアプリケーション(ドキュメント, スプレッドシート, スライドなど)を利用している場合が多いです。

業務マニュアルの有用性は業界・業種を問わずに認められており、「ただ業務の作業手順を記したもの」に留まらず、業務品質の向上・均一化・標準化や業務オペレーションの最適化、社員・アルバイトの育成などの様々な効果があり、導入メリットがあります。具体的には「業務マニュアル化の5つのメリット」で解説しましょう。

業務をマニュアル化する目的

では、業務マニュアルはどのような目的で導入されるのかを改めて理解しておきましょう。

業務マニュアルは社員・アルバイトの教育やパフォーマンス向上・生産性向上を目的として導入されることが一般的です。
業務マニュアルがあれば、実技・実演や口頭による説明だけでなく、業務背景や全体像、業務フローなどを理解しやすくなり、会社や組織としても最も効率の良く・一定の品質を保った業務依頼ができます。社員・アルバイト側の目線でも、業務マニュアルがあることで安心して業務に取り組むことができます。
冒頭のマネジメント側のお悩みを抱えている場合には、より業務マニュアルの重要性をご理解いただけることでしょう。

また業務マニュアルの最も大切な役割は、業務マニュアルの参照者に対して「業務の正しい遂行方法を伝えること」にあります。業務遂行にあたって、適切な手順を明確に伝え、条件分岐によって対応が変わる場合に必要な判断基準の設定し、誰が業務遂行したとしても同じ品質であることが重要です。

業務マニュアル化の5つのメリット

ここまでご説明した内容でもすでに一部触れているところがありますが、業務マニュアル化のメリットを整理して言及してみたいと思います。

本項では、業務マニュアル化のメリットを5つに絞ってご紹介しましょう。できるだけ「どのようなメリットなのか?」「マニュアルにすることで、なぜ業務の品質向上・効率化に繋がるのか?」を意識して解説します。

1|業務品質の向上・均一化・標準化ができる

業務をマニュアル化することで、業務品質の向上・均一化・標準化が可能です。
業務マニュアルを参照することができれば、「誰もが同じ手順で・同じように・当たり前に」業務を遂行することができるようになります。

その業務に対して、誰でも最低限のレベルでアウトプットできるようになるのであれば、マネジメント側としてこれほど嬉しいことはありません。
組織維持の観点でも重要となる配属転換や社員個々のスキル差などを気にしすぎる必要はありません。より柔軟かつ強い組織体制を構築できることでしょう。

また業務マニュアルが存在していれば、基礎的な業務知識に加え、社員それぞれが経験した事象や気付きをマニュアルに追加していくことで、情報共有をすることができます
その上、業務マニュアルの有無によって、業務フローや責任の所在が掴みやすくなりますので、ミスやトラブルなどが発生した時の原因究明もスムーズに進むようになります。

2|作業時間を短縮できる

業務マニュアルがあれば、社員やアルバイトは業務処理途中に作業に悩んで手が止まってしまったり、目的やゴールがわからず上司や同僚に聞くといったコミュニケーションを削減できます。

つまり「業務マニュアルで自己解決できる状態を作る」ことで、業務時間を有効活用できるようになり、1つの業務に要していた作業時間を短縮することで、さらなる業務改善やスキル向上に注力できるのです。
また業務上のミスを軽減することができれば、マネジメント側としても嬉しいことでしょう。

3|業務オペレーションの最適化ができる

業務マニュアル化のメリットにおいて、忘れてはいけないキーワードが「業務オペレーションの最適化」です。
業務マニュアル化ができていると、前述のとおり「業務品質の向上・均一化・標準化」が可能です。
ただし、それ以外にも「作業手順」を作成することによる「業務の最適化」の恩恵も忘れてはなりません。

4|社員やアルバイトの教育コスト削減・早期人材育成ができる

業務マニュアル化を進められれば、社員やアルバイトの教育コストの削減や人材育成の短期化に役立つでしょう。
業務マニュアルがない場合には上司や同僚が直接OJTにて指導をするか、あるいは人事リードでの研修をするといった形での新人教育が多いですが、どうしても手間と時間がかかってしまうものです。
新人側の立場としても忙しいような現場ではとても質問をしづらく、コミュニケーション上の問題にも繋がりかねません。

また・・・たった数回のOJTや指導では、理解度の差がどうしても生まれてしまい、業務の背景や重要性を十分に理解できていないままで取り組んでしまうといった新たな問題を作る火種にもなり得ます。
この点でも業務マニュアルがあれば、新しい社員やアルバイトであっても、自分の意志で業務理解やスキル向上に取り組むことができる環境を整えられます。
新人側の目線では「誰かに質問するプレッシャーを軽減」でき、上司側の目線では「新人から質問されるプレッシャー軽減と管理業務上のリスク回避」を実現できるのです。

5|脱・業務の属人化ができる

業務マニュアル化は、業務の属人化からの脱却にも役立ちます。属人化とは、一部の社員しか遂行できない業務が存在している状態です。業務の全体最適化の妨げになったり、その社員が突然出勤できなくなるなどの場合に業務遂行上のリスク要因となるものです。

業務マニュアルがあれば「特定の誰かにしかできない業務」がなくなり、業務の割り振りにも困らず、不測の事態にも臨機応変な対応ができるようになることでしょう。

業務の引き継ぎにも役立つ

業務マニュアルがあれば、社員の離職などにも備えることができます。
業務の属人化が進みすぎてしまうと、たった一人の離職が業務遂行上の大きな妨げとなり、ひいては経営課題となる可能性があります。
マネジメント側として、このようなリスク要因を少しでも減らすためにも業務マニュアルを有効的に活用すべきといえるでしょう。

業務マニュアル化の3つのデメリット

業務マニュアルは導入メリットが多いものですが、扱い方によってはデメリットもあります。

1|業務マニュアルに縛り付けられてしまう可能性がある

業務マニュアルがどんなに便利であっても、従業員やアルバイトに業務の目的や意味を十分に伝えられていないと…「業務マニュアルの通りに作業をすること」を目的としてしまう人が現れてしまいます
本来社員やアルバイトには、自らの創意工夫を持って業務に取り組んでもらい、そのフローや成果を改善していくような姿勢をもってもらう必要がありますので、このような状態はあまり良くありません。いわゆる「マニュアル人間」が生まれてしまう原因です。

また、そのような方が業務ミスを起こしてしまった場合には「マニュアルに書いていたから・書いていないから」などと責任転嫁を行ってしまうことでしょう。
業務マニュアルはあくまで業務をスムーズに進めるための補助資料であって、「必ず従うべきもの」ではない場合がほとんどです。
業務マニュアルに縛り付けられてしまうと、臨機応変な対応ができなくなり、マニュアルに記載されていないイレギュラーケースに遭遇すると、その後の対応が問題に発展してしまうなどのことが発生します。

このようなことを避けるためには、以下4つのポイントに気を付けることが重要です。

    • 業務の目的や意味を十分に従業員やアルバイトと共有すること
    • マニュアルに必ず従うということを正とはせず、状況に応じた対応を意識付けること
    • マニュアル化されている業務範囲内においては、従業員やアルバイトに裁量権を与えること
    • マニュアルの運用に対する共通認識を持ち、上記3つを実現できる組織制度や風土を作ること

2|業務マニュアルが形骸化してしまう可能性がある

業務マニュアルは作成・更新・管理をしっかりと行わないと、運用できずに形骸化した資料になってしまう可能性が高いです。業務マニュアルを活用した業務改善を目指すのであれば、この「業務マニュアルの作成・更新・管理」がしっかりと運用フローに乗るように意識しましょう。

形骸化してしまう条件は以下の3つです。業務マニュアルは、このような状態に陥らないような作成・更新・管理が必要といえるでしょう。

  • 業務マニュアルに記載されている内容が古い現場の業務実態とかけ離れてしまっている
  • そもそも業務マニュアルの保管場所がわからない参照したい時に参照できない
  • 文字ばかりでわかりづらい、図版・写真・動画などでわかりやすくする工夫がされていない

3|業務マニュアルの作成・更新・管理に手間と時間がかかる

業務マニュアルをイチから作るとなると、当初の想定よりも手間が掛かってしまうものです。
業務マニュアルを少しでも効率的に作成するためには、以下の手順を意識しながら進めていくべきでしょう。

  1. 業務内容を作業担当者からヒアリングする
  2. 業務フロー整理し、体系化する
  3. 業務マニュアルする内容を定め、構成を検討する
  4. 業務マニュアルの事前設計を元に、マニュアル化に着手する

業務マニュアルを作成するとなると、既存の業務との兼務はおすすめできません。どうしても既存業務を優先してしまうことが多く、業務マニュアルの作成に遅延が発生してしまうことが理由です。

もし可能であれば、業務マニュアルの専任を定め、マニュアルの作成に集中できるような状況を作り出すことが重要といえるでしょう。

マニュアル化すべき業務とは?

それでは、どのような業務がマニュアル化に適してるのかを見極めていきましょう。

マニュアル化判断:業務マニュアルに落とし込むべき業務か否か?

前述のとおり、業務マニュアルの役割は参照者に対して「業務の正しい遂行方法を伝えること」にあります。

ですが、業務マニュアルがなければできない業務がすべてマニュアル作成の対象となるかといえば、そんなこともありません。
業務の作業手順が複雑だったり、判断ポイントが多いものや手順の分岐が多いものに関しては、マニュアルを作成したとしても思ったような効果が得られず、逆に作業効率が悪くなってしまうなどの悪影響が出てしまうかもしれません。

そのため、各社・各自の知見にて、まずは業務マニュアルに落とし込むべき業務か否かを判断するようにしましょう。

効果整理:業務マニュアル化検討の優先順位の決め方

業務マニュアル化検討の優先順位を決めるには、業務の発生頻度(回)×業務作業時間(h)をマトリクスにて効果整理をしてみると良いでしょう。発生頻度と作業時間が大きい業務から順番にマニュアル化すべき、という一つの判断軸を持つことができるようになります。

このマトリクスを本記事では「効果整理のマトリクス」と呼ぶことにします。

業務マニュアル化検討の優先順位の決め方(効果整理のマトリクス)

効果整理のマトリクス

なお、効果整理のマトリクスにおける業務の発生頻度(回)と業務作業時間(h)の定義は、自社で決めていただいて問題ありません。

パターン分類:業務マニュアル化すべきはあまり経験に依存しない業務

業務マニュアル化すべきものは以下の4つの区分に分類可能です。その中でも「あまり経験に依存しない業務=以下②,③,④の業務」は業務マニュアル化すべきといえるでしょう。

経験則・ノウハウ型の業務:業務経験や知識、得られたノウハウをもとにした高度な判断を要する業務
パターン判別型の業務:ある程度の専門知識を必要とし、そこから一定のパターンを判別し、判断を要する業務
専門手順型の業務:ある程度の専門知識を必要とするが、手順書があれば遂行可能な業務
単純手順型の業務:専門知識を必要とせず、手順書通りに行えばアウトプットが同じ業務

①経験則・ノウハウ型の業務は事業の価値を左右する「付加価値業務」である可能性が高いでしょう。マニュアル化が難しい業務が多いので、その業務のマニュアル化に労力を割くよりも、経験から得られる社員員やアルバイトの成長を重視すべきです。

②パターン判別型の業務と③専門手順型の業務は専門知識を必要とする領域であるものの、業務マニュアルがあれば、社員員のスキル向上や成長を促すことができるものといえます。

④単純手順型の業務はマニュアル化が容易で、手順さえ守れば「あたり前にこなせる業務」です。業務マニュアル化を進めておけば、業務品質の向上・均一化・標準化に直結するものといえるでしょう。既存業務の遂行のために、新規社員員やアルバイトの採用を悩むよりかは、業務マニュアルの整備を優先すべきです。

上記のように業務分類を行い、どの業務がマニュアル化を必要としているのかを判断していくべきでしょう。

業務マニュアルの作成・更新・管理の負荷を軽減するには?

業務マニュアルの導入は非常に重要である一方で、作成者にとっても負荷が大きくなります。また業務マニュアルが参照者を十分に考慮していないと、参照者にとっての負荷も大きくなってしまいます

まずは業務マニュアルに必要な要素を把握し、誰でも作成・更新・管理・参照がしやすい資料作りを目指すべきでしょう。

業務マニュアルに必要な要素とは?

業務マニュアルは参照者にとってわかりやすくするために、以下のポイントを意識する必要があります。ポイントと合わせて、その要素の意味を含めて解説しましょう。

  • 表紙業務マニュアルの限定性を明示する
  • 業務マニュアルの目的、背景管理者目線での業務マニュアルの目的と背景、マニュアル作成意図の明確化する
  • 業務前提、事前準備、作業準備:業務マニュアルの参照者目線での作業着手前に必要な心構えと準備内容の伝達する
  • 作業手順業務担当者の知識・経験・感覚を網羅し、わかりやすく手順としてまとめる
  • 注意事項:業務遂行するにあたっての注意すべき事柄をまず網羅的に列挙する

業務マニュアルのテンプレートを有効活用しよう

業務マニュアルの作成を効率的に進めるなら、テンプレートファイルを利用することをオススメします。

  • Word(ワード)版
  • Googleドキュメント版
  • PowerPoint(パワーポイント)版
  • Googleスライド版
  • Excel(エクセル)版
  • Googleスプレッドシート版

本記事では、上記6つのファイル形式に対応した「業務マニュアルのテンプレート」を無料ダウンロード可能な特典としてご用意いたしました。
業務マニュアルの作成をご検討中の方は、ぜひご活用ください。以下よりダウンロードいただけます。

【無料配布】業務マニュアルのテンプレートをダウンロードする

業務マニュアル化の支援を外部に求める

ここまでで業務マニュアル化のメリットとデメリットについて解説しましたが、実際に進行しようとすると容易には進まないことがイメージできるでしょう。

そもそも業務の全体像を把握できていなかったり、自社の付加価値に気付けていなかったりと・・・業務マニュアル化以前の課題があることも多いです。
そのようなことが想定される場合には、まずは業務改善のプロフェッショナルに相談してみることをオススメします。

まとめ

さて本記事では、業務マニュアル化のメリット・デメリットを中心にご紹介させていただきましたが、いかがでしたでしょうか。
業務マニュアルの作成をご検討中の方は、ぜひ本記事の内容や無料テンプレート集を日々の業務改善に活かしていただければと思います。

  • この記事を書いた人
  • 最新記事

ACT3 ONLINE 編集部

Act.3 Consultingでは、企業や個人事業主の成果を最大化するために、論理性やデータ分析(根拠)に基づくコンサルティングサービスを提供しています。 提供できる価値はクライアントにより異なり、クライアントの成果を最大化できる方法をこれまでに蓄積したナレッジと定量的なデータを元に分析・プランニングを行います。 このような支援・サポートをご希望の方は、是非お気軽にご相談ください。

-その他
-

© 2024 Act.3 Consulting 通信