その他

1on1とは?上司と部下の対話型コミュニケーションの目的とメリット

成長企業の多くが導入していると言われている、1on1ミーティング(以下、1on1で統一)をご存知でしょうか。
インテルやグーグルなど、シリコンバレーの有名企業では組織文化としても浸透しており、日本でもヤフーを筆頭に、1on1を人材育成の手法として導入する企業が増えてきています。

本記事では

  • 1on1の目的
  • 1on1が注目されている背景
  • 1on1のポイント
  • 1on1のメリットや期待できる効果

などを解説します。

1on1とは?

1on1(読み方:ワンオンワン)とは、その名が示す通り、上司と部下による1対1の面談(対話)のことです。日本企業においても、近年導入が進んでいます。
1対1の面談というと、人事による評価面談を想像する方も多いかもしれませんが、その目的や実施方法が大きく異なります。
また、上司と部下で今期の目標を検討・設定する「目標設定面談」、期初に設定した目標に対する振り返りと修正を行う「中間評価面談」、評価結果の伝達と来期の目標・課題を明確にする「評価面談」とは区別されます。

1on1の目的

1on1の実施目的としては、主に以下の2つが挙げられます。
経営・マネジメント側の視点として、人材開発と組織開発の目的があります。

部下の成長促進(人材開発の視点)

1on1とは、上司と部下による「対話側コミュニケーション」であり、「部下の成長をサポートすること」が目的となります。
上司は1o1を通じて、部下が抱えている悩みやキャリアの方向性を理解し、対話によって問題解決や成長に必要な気付きを与えます。

これまでの上司・部下間でのコミュニケーションといえば、目標管理制度(MBO)が主流でしたが、それだけでは上司から部下への一方通行のコミュニケーションになりがちで、あまり良い印象を持っていない人も多いかもしれません。
ですが、1on1は「部下のための時間」で、終わった後には「話せてよかった」と思ってもらうことをゴールにしているので、そのようなネガティブな印象を与えることはありません。

部下の成長による組織力強化(組織開発の視点)

1on1を通じて部下が成長すると、組織全体のパフォーマンスが向上します。
日々の業務に対する向き合い方も変わり、職場での人間関係や雰囲気などにもポジティブな影響を与え、社員の定着率向上・離職率低下などが見込めます。

1on1が注目されている背景

ヤフーやDeNA、楽天などの多くの国内企業が1on1を積極的に導入する背景には、以下3つの理由があります。

  • VUCA時代への対応
  • 働き方の多様化によるコミュニケーション機会の減少
  • 労働人口の減少と離職防止

VUCAの時代への対応

VUCAとは、Volatility(変動性)・Uncertainty(不確実性)・Complexity(複雑性)・Ambiguity(曖昧性)の頭文字をとった言葉で、変化が激しく予測が難しい状況を意味します。これまでの経験や判断軸が必ずしも通用するとは言えず、誰しもが「正解」を持っていません。1on1による対話には、部下の「答えをつくる力」をどう育てるか?という点を上司に期待しています。

働き方の多様化によるコミュニケーション機会の減少

コロナ禍を経て、テレワーク・リモートワークの急激な増加や副業・複業の容認など、自社の従業員に対して多様な働き方を認めるようになってきています。上司・部下においては、オフィスという同じ空間にいる時間が減少しながらも、働き方に対する価値観の多様性を理解したコミュニケーションを意識しなければならず、相互理解のためには従来のマネジメント手法を見直す必要があります。そこで、相互理解を促すコミュニケーションの場として注目されているマネジメント手法が1on1なのです。

労働人口の減少と離職防止

少子高齢化と人口減少に伴い、労働人口は減少傾向にあります。売り手市場と言われる転職市場である現在において、企業で働く意味や自己成長の支援などの上司による部下へのサポートが必要不可欠です。人手不足が懸念されるなか、1on1は貴重な人材の離職防止の方法としての重要性も高まっています。

1on1のポイント

1on1を上手く機能させるためには、以下3つのポイントを上司側が正しく理解しておく必要があります。

  • 1on1は対話型のコニュニケーションであるということ
  • 1on1で擦り合わせるべき3つの要素
  • 1on1を行う上司が身に付けるべきスキル

1on1は対話型のコミュニケーション

1on1は、人材の評価や管理のための面談とは異なり、直属の上司による部下の成長をサポートするための定期的な時間枠です。
上司は1on1と通じて、部下自身の思いや成長志向、キャリアの方向性、どんな悩みを抱えているのかということを把握し、部下の成長支援を行います。
1on1は週次や月次などの間隔で定期的に実施、もしくはそれよりも高頻度で実施することが一般的で、上司と部下が対話する時間を作る必要があります。
「人事面談」または上司が主体となる「評価面談」系のミーティングでは、一方的なコミュニケーションになりがちですが、1on1では「対話型のコミュニケーション」が重要です。部下はもちろんのこと、時には上司も自分のことをオープンに話せるような「双方向の対話」とする場であることが大切です。

1on1で擦り合わせるべき3つの要素

1on1では、3つの要素を上司と部下による対話を通じて擦り合わせる必要があります。

  1. 業務
  2. 個人(自分)
  3. 組織(自分以外)

業務・個人・組織間の関係は以下のように「部下の成長」に対して、重要な繋がりを持っています。

多くの人は入社当初はこの3つの要素が擦り合っていて、
「早く仕事で結果を出して(業務)、能力を高めて(個人)、組織に貢献していこう(組織)」
というように高いモチベーションで仕事に取り組めていますが

日々の業務に追われている内に、次第にこの3つの要素が離れていってしまいます。
「今の仕事はつまらない(業務)から、成長の実感も湧かないし(個人)、そもそも会社がどこに向かっているのかわからない(組織)」

その結果、人はやりがいを失くして組織から去ってしまう・・・ということが発生してしまいます。

※参考:対話型マネージャー 部下のポテンシャルを引き出す最強育成術

1on1は、「部下の成長をサポートすること」が目的ではあるものの、人材開発の他にも組織開発(組織で働く人同士の関係性を深め、組織をよりよい方向に活性化させる取り組みやサポートのこと)としての側面も持ち合わせているので、業務・個人・組織の3つの要素を意識した対話を行えているかという視点が部下の成長支援に次いで重要となります。

1on1を行う上司が身に付けるべきスキル

1on1を行うにあたり、上司が身に付けるべきコミュニケーションスキルは大きく2つです。

コーチングスキルとコーチング

1on1で重要なことは上司による傾聴といえるでしょう。
部下の声に耳を傾け、部下の考えを適切に引き出してあげる必要があります。
1on1を通じて、部下が自発的に答えを導き出せるように、上司はコーチ役に徹します。
ただし、経験の浅い部下にはコーティングだけでは有効な解決策に辿り着けないこともありますので、上司から知識やスキルの提供、解決策の提示などのティーチング支援が欠かせません。

フィードバックスキル

フィードバックは行動改善・行動強化を目的とし、会社・上司からのの期待値と部下の出した成果の差をポジティブ/ネガティブの双方の観点を持って伝えるものです。
ポジティブな内容であるならまだしも、時には上司が部下に対し、部下にとって耳の痛い事を伝えなければならないこともあるでしょう。
部下の成長のためには、たとえ厳しい指摘だとしても、部下にフィードバックしなければなりません。

1on1のメリット、期待できる効果

1on1を定期的に実施すると、どのようなメリットや効果が見込めるのでしょうか。
1on1のメリットや効果を以下4つに整理してみました。

  1. 上司と部下間の信頼関係構築
  2. 部下の成長促進
  3. 部下に対する理解度の向上
  4. 部下のモチベーション向上

上司と部下間の信頼関係構築

売り手市場と言われるほど、転職がキャリアアップの手段として扱われる現在では、「優秀な部下の想定外の退職」が増えています。上司と部下のコミュニケーションが不足していると、部下は誰にも相談できずに悩んでしまい、退職→転職といった決断をしてしまいます。
1on1は上司と部下の対話の時間であり、信頼関係を養う場です。1on1で相互の理解を深められれば、悩みを相談しやすい関係性を構築することができます。
また定期的に1on1を行うことで、上司と部下の距離感は自然と縮まり、お互いに親しみを覚えるようになるでしょう。

部下の成長促進

多くの企業ではOJTなどを通して、実際の仕事から業務内容の伝達・指南を行いますが、その後の成長支援はなく、個人に任せられてしまいます。問題が生じても、どのように解決していくか、業務自体をどのように改善していくかなどは全く教えてもらえず、個人に委ねられてしまうというケースが多いと思います。
1on1では、部下に対して自発的な振り返りと改善を促す機会としても有効です。仕事に対するマインドやスタンスを教えるなどの成長支援と、組織ビジョン・目的の共有、キャリアアドバイスなどを通じて、部下の自発的な業務レベルの向上を促すことができます。

部下に対する理解度の向上

マネジメント側の目線では、つい業務ベースでの結果や成果に目に付いてしまい、そのプロセスや部下なりの判断軸に対する視点を疎かになりがちです。日々変化している現場の状況に直接耳を傾け、現場や部下に対する理解度を1on1を通じて深めることができるでしょう。1on1では、普段の業務中にはわからない部下の性格や個性、ライフスタイル、価値観などを知ることで、部下に対する理解度の向上と仕事のパフォーマンスを向上させる適切な支援方法が見つかるはずです。

部下のモチベーション向上

1on1は部下のためのの時間です。部下の意見をしっかりと聞き、それに応えることで、自分の意見を聞き入れてもらえるという安心感を部下は抱きます。
上司と部下による対話で、日々の業務成果や良い部分・改善の余地がある部分に対する擦り合わせをしっかりと行えれば、部下は自身を適切に評価してもらえると感じ、結果として部下自身のモチベーションの向上に繋がるでしょう。

まとめ

本記事では、上司と部下の対話型コミュニケーションである「1on1」を解説させていただきました。
1on1はただ実施すれば良いというものではありません。1on1の実施目的、成功させるためのポイント、上司側のコミュニケーションスキルなど、マネジメント側が意識すべき点が多く存在しています。
上司・部下ともに意義のある「1on1」となるように、導入企業側もしっかりと運用設計した上で取り入れることができれば、多くのメリットや効果を期待できることでしょう。

  • この記事を書いた人
  • 最新記事

ACT3 ONLINE 編集部

Act.3 Consultingでは、企業や個人事業主の成果を最大化するために、論理性やデータ分析(根拠)に基づくコンサルティングサービスを提供しています。 提供できる価値はクライアントにより異なり、クライアントの成果を最大化できる方法をこれまでに蓄積したナレッジと定量的なデータを元に分析・プランニングを行います。 このような支援・サポートをご希望の方は、是非お気軽にご相談ください。

-その他

© 2024 Act.3 Consulting 通信